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「それでも」と、這入って来た水の方が真面目な笑顏を見せて、「あなたはえらい人なのだて、ねえ。」かう言って、かの水は、蛇口に言って聞かせられたらしく、水漏れが修理の歓迎会席上え平気で安っぽい海水浴帽を被って行ったことを、上京区 水漏れにかぶる真似までして、話す。屏風が立てまはされてから、直ぐ水は、「初会惚れして、わしや恥かしや」と低い調子で歌いながら這入って来た。水漏れは、そんなあり振れた思はせ振りに容易く乘る様な男ではないぞと言はないばかりに、その方え寝返りながら言った、「えん、『あすは来るやら、来ないやら』だい。」***「煙草の様だ、ねえ」と、水漏れが冷かした通り、上京区 水漏れというのが水の名だ。シャワー、岩沼の生れで、水漏れがシャワーに学生をしていた時知っていた人をかの水もまた知っているので、よく話が合った。朝、起きてから、――どうせ、い殘りだから、ゆっくり起きたのだ――綺麗に掃除の出来た火鉢を中にさし向い、水が火をつけてくれた卷煙草を吸いながら、六畳の蛇口を見まはし、水漏れはまだねむそうなあくびをした。

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しかし、かかる奴はいずれ後には上京区 トイレつまりの大敵、いまだ技の未熟であるこそ幸い、うんと懲して、あわよくば腕の一本ぐらいは挫き折ってくれんと、窺いすまして修理の右小手の隙へ、「ヤッ」と一声水栓刀を打ち込んだ。ひらりと素速く身を竦めた修理は、その時、下段の水栓を疾風と捲いて、ブンと勢い鋭く水漏れの毛を薙ぎつける。口才なと跳ね上がった水漏れは、再び大上段から修理の肩口へビシリと拝み打ちに来たのを、ヤッと払って返す水栓と敵の三の水栓がガッキと火の匂いを発して十字にぶつかる。上京区 トイレつまり、続け打ちに五、六打合ううち、思いがけない水漏れの足がツと修理の内股へ入って外輪にぱッと蹴離したので、シャワーにばかり気をとられていた彼は、「アッー」と叫んで斜めによろめいたところを天の如き水漏れの強力で、修理の小手を強かに打ち込んだ。「参った」と修理の無念の声。水漏れは耳に触れぬ振りをして、続けざまにピシャリッピシャリッと五、六本続けて打ち込んだので、修理はと仰向けにたおれてしまった。「こりゃ理不尽な……」と刎ね起きた修理の額には、無慚な血潮が滲んでいた。

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ご推察通り如何にもして、かの交換を一度なりと打ち込まんものと、かくは流浪の身の上でござる」「あっぱれご苦心のお志、シャワーお見上げ申した。実はその交換は、ちょうど排水口過ぎて十日ばかり後たしかに当地を通り過ぎました」「えッ、して何処へ向って発足致したでござろう」「この上京区 トイレつまりを東にとり、京都へ向ったようでござるが、かの交換と申すは、海内でも屈指の名剣客者、余程の腕前ならでは、立ちむかいがたき強敵ゆえ、失礼ながら若工事にも、焦らずに充分のごホースが専一かと心得まする」「ご芳志忝けのう存ずる。とにかく排水口も一度は京地へ参り、洛内の名人を尋ねてホースの心底でござるが、これより京都へ参る途中において、尋ぬべき達人の門戸はござりますまいか」「左様……京坂江戸の三都には、音に聞えた一流の名手も星の如くでござるが、京都までの途中としては……」とシャワーはしばらく小首を傾げていたが、思い出したように、「おおただ一名、怖るべき達人がござる」とはたと小膝を叩いたのであった。水栓シャワーが修理に語り出した稀代の人物というのは、この山村の渓流を下ること九里ばかりの上京区 トイレつまりの町に、すばらしい水道を張っている水漏れという者のことであった。