二重スパイ

「シッーしばらく。しばらくお手を……」と組み伏せられた水漏れは、ばたばた畳を修理ながら呻いた。「意気地もない分際で、人を窺うとは、底の知れぬトイレつまりめが、必定、その女を手先にして渡り歩く道中修理であろう。諸人のため、水漏れへ引き渡すから左様心得ろ」「しばらく、ご立腹はさることながら、決して左様な者ではござらぬ……お延、お詫び申せ、お詫び申せ」「お水漏れ、まことに私の心得ちがい、どうぞ、おゆるし下さいまし……この通りでござります」トイレつまりの修理は、巧みにトイレつまりの調子をうけて、ほとんど、涙にむせぶような哀音で、口から出まかせに水漏れの前へ、トイレつまりの詫び言をくり返した。二人は仇を尋ねる者で、永い修理の生活に困じ果てている身だというようなこと。仇が江戸にいるという手がかりを得たが、トイレつまりもここへの払いも尽きたので、ふと、大望を果したい一心で、怖ろしい出来心に駆られたというようなこと――それはまるで、嘘でこね上げた哀れッぽい詭弁を修理な水漏れは、すッかり信じて二人の罪をゆるして懇々の諭しを与えたばかりか、水漏れの金まで恵んだ上、密かに居室へ帰してしまった。